エッセイでジョギング3「スポーツと色彩」

◎古藤高良

筑波大学教授 医博 古藤 高良

「いろいろ」という言葉は、数限りない量を象徴する代表的な形容詞として生活の中で数多く使われている。このように”色”はわれわれの生活環境の中に無数に存在している。色は人々の購買意欲や嗜好、食欲などの感覚を左右することはもちろん、変色から、その動物や植物の鮮度や健康状態を知るといった物質の判断に至るまで、広範囲にわたって大きな役割を演じている。

JRは色によって運行の系統別を表し、銀行や会社の伝票、果ては選挙の投票用紙にも色別の分類がなされている。また、学術面では、人工衛星による地球上の各種環境調査にまでも”色”は応用されている。

 このように、人間の五感の中の約87%は「視覚」の働きが占め、残りのわずか13%で、人間はにおいを感じ、音を聞き、ものに触れ、味を知るという。

 近年、スポーツの世界もまた、「視覚」という能力か極めて真剣に問われる領域である。と同時に、周辺の環境によってその能力が左右されやすい分野でもある。例えばトレーニングルームも、照明を新しくしただけで明るい雰囲気になり、利用者も生き生きとして見えるようになることだってある。明るい色違いのユニフォームを着ると体が軽くなったように思うこともある。また、逆に、体育館の種目、とくにバレーボールのように、選手が高い位置のボールを追いかけるような種目では、照明が強すぎるとボールを正確に打つことができない、などなど……。

 スポーツ界へもカラー化の大きな波が押し寄せている。華やかな色が駆け抜けるマラソン、原色と原色がぶつかり合うアメリカンフットボール、銀盤を舞うフィギュアスケート、マット上に美しい肢体を弾ませる新体操もレオタードの新しさは大きな魅力である。技に加えて、審査員に「美しさ」をどのようにアピールするか、ウェアの出来、不出来も大きな要素だけに”カラー化”の先端を走っている。

 一方、逆に目立たないように工夫しなければならないというスポーツがある。それはスキーのジャンプ競技である。ジャンプ競技のためのウェアは、バックの空の色。山や雪のいろからシルエットが浮き出ると、からだのブレが審判にわかり飛型点に大きく影響してくる。反面バックに溶け込んでしまってもいけない。結果的には、原色の青や黒に灰色を入れてくすませている。このように色彩は運動の成績を左右する大きな要素をもっている。

 「形は物を説明し、色はそれに内容を与える」ことが忘れられている気がしてならない。


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